2000年の年末に惜しまれながら閉村した「かごっまふるさと屋台村」が、鹿児島中央駅に隣接するバスステーションの地下に復活した。
新しい屋台村は「北薩摩」、「南薩摩と離島」、「大隅」の3つのエリアに分かれており、18店舗が軒を連ねる。
ここだけで、鹿児島各地の食巡りができるというわけだ。
エスカレーターで地下に降りると、舞台のセットにも似た屋台群が現れ、客を呼ぶ威勢のいい声がそこかしこから聞こえてくる。
屋台というより、アトラクション施設に来たような感覚になる。
昔、仕事で福岡に住んでいた頃、中洲の屋台へ行ったことがある。
川沿いに並ぶ屋台は、個性あふれる看板や提灯で彩られ、どれも魅力的だった。
見知らぬ人と肩を寄せ合い、お酒を飲み、昔馴染みのように笑い合った。
川面に反射する屋台のきらめきと行き交う人々の陽気な騒めきとが相まって、別世界のようだったことを鮮明に記憶している。
コロナ禍の地下街にオープンしたかごっまふるさと屋台村は、最新の換気システムを備えており、いよいよ夜の街にもウィズコロナの時が訪れたことを実感する。
どの屋台に入ろうか散々迷った挙句、奄美料理の店に決めた。
故郷の名に親近感が湧く。
アクリル板で仕切られたカウンター席で、パッションビールなるものを注文する。
パッションフルーツのリキュールを使ったビアカクテルは、南国をイメージさせる新しい味だ。
懐かしい塩ゆで落花生や油そうめんも頼み、気持ちは遥か海の向こう、奄美大島へと飛ぶ。
久しぶりの奄美料理のせいか、屋台という特殊な空間のせいか、見知らぬ客とも話が弾む。
ノッてきた私が奄美の話をすると、観光客はもちろん店員でさえ、奄美に行ったことがないと言う。
奄美料理の店なのに、なぜ‥‥。
壁に貼られた真新しい奄美の地図で、なぜか私が奄美の解説をするハメになる。
まぁいいか、これが屋台の醍醐味だ。
甘苦いパッションビールをおかわりし、私は高らかにジョッキを掲げた。
奄美大島、南海日日新聞
BOOKCLUB管理人エッセイ
連載 2022-2024
by – 小さなカフェオーナー –